2016—2026 · AI定石の10年

AlphaGo以後、定石は答えの一覧ではなくなった

10年前、棋士は定石を打ち切ったかと問いました。今は、どの交換を今打ち、どれを10手後まで残せるかを問います。96,058局の公開SGF、二つの大会棋譜、KataGoのノード解析で変化を追います。

2016

定石を完了する義務が消えた

李世乭—AlphaGo第2局で、黒13は右下が未定のまま手抜きしました。黒15のノゾキも当時は俗筋とされ、局所完成という前提自体が再検討されました。

2017

三々が序盤の手になった

Masterの60連勝、DeepMindによる新三々の説明、烏鎮第1局で柯潔が3手目に三々を占めたことが、異様な座標をプロの研究課題へ変えました。

2018—2020

採用率が一桁から4割へ

棋士は初手だけでなく、局所を未完にする考え方を吸収しました。公開標本の裸の星への40手以内三々は、2017年9.72%から2018—2020年40.06%へ上昇しました。

2021—2026

革命が日常の文法になった

早い三々はもはやニュースではありません。ツケ、ノゾキ、ハネ、手抜きとともに、周囲の強弱、シチョウ、コミ、先手で答えが変わる時機の網を作ります。

一つの形が1.66%から約半数へ移った過程

  1. 2013-2015: 1.66% (85/5121)
  2. 2016: 1.16% (26/2248)
  3. 2017: 9.72% (235/2417)
  4. 2018-2020: 40.06% (2588/6461)
  5. 2021-2025: 46.92% (5165/11007)
  6. 2026*: 45.59% (444/974)

分母は各期の適格な重複除外棋譜、分子は40手以内に定義事象が1回以上ある棋譜です。

* 2026年は8月24日までの未完全集計です。CWIは大会ごとの収録差を明記しているため、世界全局の悉皆調査ではなく、同一資料内の時系列として読みます。

実験1:定石は未完のまま離れられる

第2局12手後、右下には黒が続けるべき形が残って見えました。AlphaGoは黒13をJ17へ手抜きしました。Fan Huiの注釈には、古力と周睿羊が基本定石すら未完でよいのかと驚いた記録があります。

現代KataGoは、黒13前を黒37.47%・-0.57目、J17後を37.48%・-0.57目とします。小数第1位では損が消えます。定石違反ではなく、局所交換に緊急性がないとの判断です。

実験2:三々は角だけでなく将来の選択肢を買う

DeepMindの2017年説明の要点は、従来の早三々が角を取るからだけでなく、収束交換を打ち切って外勢を一度に渡すから嫌われたことです。AlphaGoは交換を省き、角を未定にして左右への脱出や後の完了を見合いにしました。

10年後、世界大会の日常になりました。2026年春蘭杯の申眞諝—廖元赫戦は4手で四隅を占め、黒5が左上三々へ。1,000 visitsのKataGo第一候補はC17で、局所を5手だけ進めP3へ手抜きし、後にG18へ戻ります。

実験3:現代定石は時機のネットワーク

申眞諝の実戦を進めると、左上定石は何度も中断します。主変化は隅と全局大場を往復し、連続座標ではなく、各交換を今実現する価値で定石を定義します。

各ノードは同一棋譜、同一fastモデル、1,000 visits上限です。勝率と目差の順位が一致しないこともあるため、小差を絶対評価にせず、訪問数と主変化から探索の焦点を読みます。

定石は消えず、ついに全局へ戻った

AlphaGo以前も棋士は定石が全局に従うと知っていました。しかし人間の研究費用が局所結論を格言へ固めました。強いAIは結論済みの交換を探索木へ戻し、他の三隅と競わせました。

PNAS研究は1950—2021年のプロの580万超の意思決定を解析し、AIで約580億の反実仮想棋譜パターンを生成しました。超人的AI以後、人間の判断品質が有意に上がり、新手が増え、高品質との関連も強まったと報告します。本稿の三々曲線はその集団結果に具体的な形を与えます。

今の定石学習は2015年本を2026年本へ替えることではありません。この交換を省くと相手はどう使うか、今手抜きした最大場はどこか、一巡後に隅の答えが変わるかを学ぶことです。

解析方法と再現範囲

統計は2026-08-24取得のCWI games.tgzからscripts/analyze-joseki-adoption.mjsで生成。96,058主変化を全着手列SHA-1で88,268局へ重複除去後、年、19路、互先、40手条件を適用しました。

2016局は公開済みdeep解析kata1-zhizi-b40c768nbt-s11272M-d5935M、通常約2,000 visits/ノード。2026局は2026-08-24にfastモデルb10c384h6nbttflrsで8ノード各1,000 visits、計8,056 visits。モデルが異なるため各局内部だけを比較します。

研究・棋譜・一次資料

  1. PNAS · Superhuman artificial intelligence can improve human decision-making by increasing novelty
  2. Google DeepMind · Innovations of AlphaGo
  3. Google DeepMind · AlphaGo's next move
  4. Google DeepMind · AlphaGo Zero: Starting from scratch
  5. CWI · 90,000+ SGF records of professional Go games
  6. SGF · AlphaGo vs Lee Sedol, game two
  7. SGF · Shin Jinseo vs Liao Yuanhe, 16th Chunlan Cup